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分身 <ポジティブ書評>
作品はふたりの主人公である鞠子と双葉の話が交互に繰り返されることにより、進んでいく。すなわち、まず「鞠子の章」があって、次に「双葉の章」があって、という感じである。わりと伝統芸ともいえる手法だが、私はこの手法が非常に好きである。
どこを面白がれというのだろう。まずもって、ストーリーに特徴がなさすぎる。わざとやってるんじゃないかと思えるほど、予想の範囲内にとどまっている。おそらく、コンピュータに小説を書かせたら、こういう感じになるんだろうなあ。具体的に言えば、実は鞠子が母親に愛されていたとか、最後の研究所の炎上シーンだとか、そういうところ。 …5点 |
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方舟さくら丸 <ポジティブ書評>
微笑と冷笑と苦笑と。高尚な笑いでもなく、低俗な笑いでもなく。とりあえず、なんとなく笑ってしまうような小説だ。なんで自分が笑ってしまうのかよく分からないが、おそらく舞台と小道具の使い方の面白さだろうなあ。
舐めるように読む。そういう本だろう。面白い部分部分がパッチワークされて、ひとつの小説になっている。ゆえに、細部を見れば面白いが、全体としては散漫な印象をうける。 …8点 |
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黒い家 <ポジティブ書評>
実際にありそうだなあ。そこが怖い。こんな事件がおこったらマスコミの書く記事まで浮かんでくるような、そういうリアリティがある。赤ん坊を電子レンジにいれたり、猫にアイロンをあてたりとか、そういう都市伝説に比べたら、保険金のために指を切り落とす人間なんて山ほどいそうだ。
出だしは良い。『黒い家』というタイトルが示すように、一種ブラックボックスとなった空間から、染み出すように恐怖が溶け出てくる。しかし、物語が進むにつれて次第に恐怖の正体が表舞台にでてくる。こうなると、それに反比例するように恐怖が薄れてくる。得体のしれない怖さがなくなってしまう。 …6点 |
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姑獲鳥の夏 <ポジティブ書評>
懐古調ではあるが、登場人物たちは近代的自我の持ち主である。ミスマッチではなく、作風にうまく溶けこんでいる。読んでいて気持ち良い。「ミステリ」でも「推理小説」でもなく、「探偵小説」という感じだ。しかし、登場人物たちの思索が科学やら哲学のことであるあたりが、この小説ならではだろう。
これはトリックっていうんだろうか。私は許せない。クリスティ『アクロイド殺し』みたいな、清涼感のある一発ギャグ的掟破りではなくて、ただのルール違反じゃねえか。こんな、読者に分かりようの無いトリックは不可である。最大限誉めても「突拍子が無いトリック」としか言えない。普通ならば「思いつき」で断じられるようなものだ。 …5点 |
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傭兵ピエール <ポジティブ書評>
これを読まずに何を読もう。とりあえず、かっこいい人間を見たければ、まずこの本を読むべきである。豪胆で勇猛で人情味がある。なんともありきたりなキャラ立てかもしれないが、全てが破格である。人間の魅力で読ませる歴史小説は星の数ほどあれど、西洋仕立てだけあって、日本の歴史人物にはない魅力がある。「武士道とは家を誇る美学。騎士道とは自分を誇る美学」とはよく聞くけれど、やっぱり騎士道のほうが人間を浮き出すのに向いているみたいだ。
不要。 …9点 |
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玩具修理者 <ポジティブ書評>
よくまとめられた短編小説。淡々とした文章で恐怖をかもしだしている。スプラッタ系の描写は怖いというより気味が悪い、と思うことが多いのだけど、この小説はちゃんと「怖い」と思わせてくれる。
ホラー崩れ。不気味というには直接すぎて、陰惨というにはあっさりすぎて。もっとじっとりせめられたほうが、私は好きである。 …4点 |
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聖域 <ポジティブ書評>
重と軽。硬と軟。絶妙なバランスである。登場人物たちはかなりネガティブな性格の持ち主ばかりなのに、どこか明るい。間の抜けた明るさではなく、悟ったような明るさなのである。思わず「愉快痛快」と言ってしまうような大胆な行動や考え方には好感触。
なんかB級のニオイがする。中途半端にオカルトなのが悪いのかもしれない。やっぱり、こういうのはもっと突き詰めてもらわないと、鼻につくばかりだ。 …6点 |
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星を継ぐもの <ポジティブ書評>
SFであり、ミステリである。少々古めかしい感じもするが、発行年から考えたら妥当なところだろう。レゴブロックみたいにストーリーが秩序だって組み上げられて行く様は、読んでいて爽快。物語が展開するたびに、新鮮な空気が頭を刺激する。
よく整理されている。いや、整理されすぎている。無駄がないのが気持ちいいのは確かだ。雑然とした部屋よりも、綺麗な部屋のほうが好きだ。だけど、あんまり綺麗すぎる部屋は、生活観がなくて、印象に残りにくくて、よいことばかりではないのである。 …6点 |
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星界の紋章 <ポジティブ書評>
明朗快活。なんだか嬉しくなっちゃうね、これは。読んでいて、「ちょっとひと休みしようかな」なんて気にもならず、一気に読んでしまえる軽快な文章。しかも、電車でもトイレでも風呂でも、どこで読んでも面白い。
明朗快活。お気楽すぎるんじゃないですか、これは。会話文ばかりで全然頭を使わないし、SFを期待して読む読者はさぞかしがっかりするだろうなあ。設定が凝っているのは良いけれど、「皇帝陛下」という単語に「スピュネージュ・エルミタ」なんて振り仮名をふっても、読みにくいだけじゃないの。むしろ、作者の自己満足ぽくでイヤになる。 …7点 |
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美しい星 <ポジティブ書評>
主役は「自称」宇宙人一家。うん、これだけ聞いて読みたくなった人は、きっと私と気が合う人だろう。内容も期待にそってくれて、登場人物は「電波な人たち」ばかり。しかも、一見しても壊れていることを感じさせないから、これは本物だろう。
うーん。どう考えても「三島文学」には似合わないよなあ。三島好きな私としては、初めて読んだ三島作品がこの本じゃなかったことを、神に感謝するばかりだ。もし、これをはじめに読んでたら、他の作品もずっと色メガネで見ることになっただろう。 …6点 |