|
航路 <ポジティブ書評>
小説を読んでいて、こんなに感情を動かされたのは久しぶり。本書は三部構成になっているのだが、第一部では恐怖、第二部は頭をひねらされ、第三部でじわりと涙が。とにかく途中で止めることができなくて、徹夜で読んでしまった。私好みの小説ではないのに、どうしてこんなに読まされてしまうのか。
メイジーはよかったけど、他の登場人物は微妙。 …8点 |
|
ヴァーチャル・ガール <ポジティブ書評>
人の手によってつくられた乙女の物語。全体を通して少年少女向けの小説のようで読みやすいが、それだけではない。「ロボットと人間」というテーマをなんとなく考えさせられてしまうような作品だ。
簡単にストーリーの概要を紹介する。 …7点 |
|
プリンセス・ブライド <ポジティブ書評>
どことなく捨て置けない雰囲気を持つ本なのである。というのも、文章が実に私好みのバカさ加減を持っているからだ。いくつか例を挙げようかと思ったけれど、どうもよいところが見つからないので、ぜひ本屋で「第一章 花嫁」などをパラパラとめくって、この心地よいバカさ加減を味わって欲しいと思う。全体を読み返すのではなく、気に入ったフレーズのみを読みたくなるような、そんな本。
ストーリーはそこそこ面白いけれども、この本でなければ、この作家でなければ読めないというようなものではなく、まあなんとか及第点かなというところ。妙に話が整理されているのも気になる。登場人物たちはそれなりに魅力的だけれど、特に突き詰めて描かれたようでもなく、かろうじてヒロインの名前が記憶の片隅に残るかな、というところ。表紙とタイトルをみたときに「そこそこ楽しめそうだ」と思ったけれど、まったくそのとおりだった。ある意味では期待通り。一応付け加えておくと、おそらく作者もそういう作品を意図したのではないかと思われる。ちょっと作者が作品にでしゃばりすぎかなというところもあるけれど、たまに効果的に介入しているときもあり、全体としてはそれほど気にならない。中世を舞台にしているのであれば、もっと毒々しいほうが、私は好きだったろうと思う。まだまだ完成度を高める余地がある本であり、そうすればきっと記憶に残る本になるのだろうと思う。 …6点 |
|
自由軌道 <ポジティブ書評>
解説で山岸真氏がこう書いている。「SFファンのあなたは、SFを読んだことがない人(映画などでSFに接してはいるが、SFを意識していない人)から、『SFって面白いの』と質問された経験があるだろう。/そこであなたが、論より証拠と何冊かの本を貸すことにしたとする。/(中略)本書を読みおえた方なら、そんな一冊としてためらわずに本書を手渡すに違いない。」
なんだかどうしても違和感を感じることがある。 …8点 |
|
デスペレーション <ポジティブ書評>
中性的な美少年を読みたければカード、マッチョな男を読みたければヒギンズ、ジェントリーな男を読みたければアーチャーといった感じで、それぞれの作家にはそれぞれに期待する登場人物がいる。ところが、キングの場合はそれがない。恐怖におびえる親子とか、いかれた中年男性とか、そういうのが多く出てくるけど、どれも単にそういう配役をふられた役者の演技を見ているみたいなもんで「待ってました」という感じではない。
前半怖くて後半怖くない、というのはホラー小説全般にいえることかもしれない。特に人間以外のモンスターが出てくると怖くなくなる。ついでに発狂した人間というのも、あまり怖くない。やはり一番怖いのは正常な人間である、というのはわりと多くの人に賛同してもらえる事実なんではないだろうか。実生活においても、例えばチラノサウルスが襲ってくるのと、隣人が悪意を持った行動を仕掛けてくるのとどっちが怖いのかと問われたら、やはり後者だ。チラノサウルスは無言電話をかけたり、盗聴器を仕掛けたりはしないもんな。 …6点 |
|
ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密 <ポジティブ書評>
ひとつひとつのエピソードが実に鮮やかに響く。たとえば、熱心なカトリックの信者である母によって、修道院に送られた娘の苦難の日々。親友とも、今までの生活とも切り離された娘はしだいに輝きを失っていき、ついには肉体も精神も荒れ果ててしまう。手を差し伸べる人はいない。娘が母に許しを請い、救いとひとかけらの愛情を求めて手紙をつづるのだが、母の耳には一切それが届かない。大げさでもなんでもなく胸が痛むような場面だ。
実のところ、幼い頃の虐待が原因で、大人になって精神的なトラブルを抱えるようになる人物がでてくると、私はちょっとひく。それをいっちゃあおしめえよ、という気がする。もちろん幼児期の育てられかたというのは、きっと人格形成に大きな影響を与えるのだろうけど、それを分かりやすいかたちで示せば読者もなんとなく分かったような気になれるのだろうけど、だけどやっぱり「逃げられた」という気になる。それですべてを説明できると思っているのが嫌だ。しかも、この本では母娘二代でこのパターンだ。新機軸のつもりなのだろうか。 …6点 |
|
ブラッド <ポジティブ書評>
何にしても、よく死ぬ。最初の死者が出るのは8ページ目。四歳の少女がフォークをつかんだウエイトレスによって刺殺される。13ページ目に二人目が死ぬ。この調子で、ばたばたと人が死んでいく。雑誌の記事なんかでミステリ作家が殺した人間の数なんかが載っていることがあるけれど、そんなものとは比較にならない。数ページにひとりの割合で死んでいく。こいつは主役級だから、まず死なないだろうと思っている人間すら、あっさりと死んでしまうのである。
あくまで雰囲気を楽しむ本だということだ。ストーリーを楽しむ本ではない。一応ストーリーらしきものはあるのだが、オカルトがらみなので、頭をつかって楽しむような類のものではないのである。それだけに、どれだけこの雰囲気に入り込めるかが問題となる。残虐シーンが嫌いな人は論外だろう。そういう人は、読んでも不快になるばかりだ。はっきりいって、この世界にどっぷりと肩までつかることができるのは、ほんの一握りの人だけであると思う。たいていは、あまりに簡単に人が死んでいくのを読むうちに、なんだか馬鹿馬鹿しくなってしまうのではないかと思う。 …6点 |
|
水霊 ミズチ <ポジティブ書評>
いわゆる、良い意味での馬鹿馬鹿しい本である。古代神話とからめて詳細に設定された背景と人物たち。主人公たる民俗学者が語る薀蓄の数々。その全てが、頭のなかを素通りして、三日もすれば全てを忘れることができるのである。つまりは、そういったものでおどろおどろしい味付けがなされているとはいえ、この本の本質はそういったものではない。素頓狂な登場人物たちの行動を、苦笑いしつつも眺めるのが楽しいのである。
怖いわけでもなく気味が悪いわけでもなく、ホラーとしてはたいした本でないと思う。全体に作者による恐怖の押し売りみたいな雰囲気があって、じんわりと湧きあがってくるようなドキドキ感がないのである。 例えるなら、一流のホラーが自らの手探りで歩いてくお化け屋敷だとしたら、この本は小奇麗な運搬車に乗せられてレールの上から見物させられるホラーハウスみたいなものだろうか。どちらかといえば、ああいうのは怖いというよりも楽しい雰囲気になってしまうので、どうも個人的にはいただけない(主催者は楽しんでもらいたいと思っているのかもしれないが)。一度入って、二度と入りたくないと思えるような、それでも心臓をどきどきさせながら入りこんでしまうような、そういうのが理想だ。 …5点 |
|
女たちのジハード <ポジティブ書評>
想像してた内容とは全然違って、ジハード(聖戦)というからにはもっとファンタジックな本だと思っていたのが、実はちゃんと現実世界で女がどう生きるかということを書いた硬派な本だった。しかも、女性が書いた女性の本にありがちないやらしさは全く感じられない。想像がはずれて嬉しい、という類の本である。
ちょっと気にいらないところがあるといえば、ある。この小説には数人の女性が登場するわけだけど、それぞれが「愛のない惰性的結婚」「愛のある積極的結婚」「留学」「経営者」などの運命(進路)に行きつくようになっている。しかも、容易に予想しうるだろうが、小説中で不幸だと言えるのは唯一「愛のない惰性的結婚」をした人物のみ。あとは、いわゆる「生き生きとした私らしい人生」を歩んでしまうのである。 …6点 |